鎌倉の海

一人暮らしの母に関する覚書き。タイトルおよび記事中の写真は内容とは関係ありません

車椅子に乗れるようになった!

看護部長のイトウさんは年輩の女性(とはいえ私よりは少し若いか)だった。そして、イトウさん以下、主治医、相談員の方々が並んで頭を下げ、「この度は誠に申し訳ありませんでした。お母様は、責任をもって当病院で面倒を見させていただきます。ここは療養病棟もありますので、そちらへ移動することも視野に入れています」との話があった。その豹変ぶりにはいささか驚いたが、とにかく、5月末までではなくしばらくいられそうなことに安堵した。

ただ、ずっと面倒を見てくれるといってもまさか5年も10年もということではあるまい。どのくらいの期間か、あるいは「ここまで回復したら」「これができるようになったら」といった基準があるのか、そうしたことをきちんと話し合いたかったのだが、イトウさんはとにかく何を言っても「申し訳ありませんでした」「それはこちらで責任を持ちます」と繰り返すばかり。謝罪よりも話し合いを、とも思うが、イトウさんとは初対面だし、今回は先方の恭順の意を示しておきたいという意向を尊重し、深追いはしないことにした。

一方、主治医の方は相変わらずだった。ロビーで待っていた時に最初に来られたのが主治医だったが、私を見て「ご家族の方ですか?」と訊いてきたのには参った。前回も会っているし入院した時にも説明を受けているし、そもそも昨年から母がこの病院に通っている時(1~2ヵ月に一度の頻度だが)いつも私が付き添っていたのに、顔を覚えていないのか、と。まあこの先生はカルテは熱心に見ているが患者や付き添いの人の顔はあまり見ないよな……

説明の内容は相変わらずで改善されていない。今回は整形外科の先生からも説明があるとのことで、そちらに期待したのだが、その説明も正直がっかりするものだった。とはいえ、手術をしなかった理由についてはある程度理解することができた。

  • 心臓への負担がかかる
  • 血栓が起きやすくなる
  • 歩けるようになる可能性は低い

大きなリスクを取っても得られるメリットがほとんどない判断だとのこと。そして、

  • 痛みはいずれひく

とのことであった。

その後、イトウさんからの説明で、現在は車椅子に乗る練習をしていて、一回で20分程度は乗っていられるようになった。20分というのはリハビリの時間制限によるもので、恐らくもっと長く座っていられると思う。様子を見ながら、もっと長時間でも坐っていられるようになったら、今はベッドの上で取っている食事を、食堂で(車椅子に座った状態で)取ってもらうようにする。そうすると食事自体もリハビリになる、とのこと。
「車椅子に乗れるようになったんですか!」
「はい、もうずいぶん前から車椅子をお使いになっています」
それは大きな進歩で嬉しい(しかし、それならそれで、教えてくれたっていいじゃないかとも思ってしまう)。

また、現在カテーテルを挿管中だが、様子を見ながら外せないか検討する……との説明もあった。とにかくこの人の話の方が、よほど患者の状態や現在の様子がわかる。今度から医師ではなく看護師さんに面談させてもらった方がいいのだろうか。

そして、面会は禁止だけどせっかくだから短時間だけ、ということで、リハビリの様子を見学させてもらった。リハビリはホシノアヤメさんが担当。前回はちょっと身体を動かすだけで痛がっていて、これでは車椅子を使うのも無理かも、と思わされたが、今回は「まだ痛い」と口では言うものの、痛がる様子もなく、前回よりははるかに落ち着いている。車椅子への移乗はむろん介助が必要だが、「ちょっとお尻をこっちに向けて」と言われるとピョコンと軽やかにお尻を動かすなど、一ヵ月前に比べるとずっと進歩していた。

その後談話室で少し話をする。だいぶ元気になっていて、ようやく安心できた。字を書いてもらったらしっかりした字を書く。オレよりうまい。

(2021/7/1 記)


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